神様仏様利尻様
利尻いきたいいきたいいきたーい!
バリエーションやりたーい!
東陵と東北稜なら我々にも!
という目論見のもと、青鬼試される大地支部を頼って再び北海道へ。
……のつもりが、出発直前にメンバーのうち1人、都合がつかなくなってしまった。
まあ、でも2人でも行けるよねということで、GW前に雪練をやってGWにバリエーションを狙う計画はそのままでいくことに。
この、雪練のためと思って行った利尻が、図らずして今回の遠征唯一の山行となりました。
土日を使い、土曜日は雪練、日曜日は北陵からのアタックという計画。
朝一番のフェリーで、いざ稚内港を出発です。
二等船室では乗客みなさん爆睡。
船室で喋ると迷惑だから喋っちゃだめと言われてしまい、私も爆睡。
途中、トイレに行こうと目を覚ますとそこには……
!!!!!
り、利尻………!!!!!!!!!
思わず叫んでしまいました。
正直、なめてた。
実物がこんなにもかっこいいものだとは思わなかった。
ただただ神々しく、息をのむ美しさ。
これが…利尻……。
フェリー側からはちょうど東北稜と東陵が見えます。
声にならない興奮と憧憬とで目は皿のまま、隅々まで舐めるように利尻を見回す。
こんな山に登れるだなんて身震いするほど幸せだと思いました。
惚れた。
(※注:まだ上陸すらしてない)
鴛泊に着いたら早速登り始めます。
例年より雪が多く、まだまだ厚々と残っていたけれど、締まっていて歩きやすい。
わかんをはいて快適に歩いていきました。
前日に降ったらしき霰が雪面に浮いていてかわいい。
今日は北陵の下部に泊まることにして、さっそく向かいに見える斜面で雪練です。
支点構築、各種ビレイ、タイムを計りながらのマルチピッチロープワークなどを日が暮れるまで反復練習。
利尻とじゃれ合って冷笑を買ったりもしつつ。
雲の上に傘雲。こんなんあるんだ……
翌朝は、パートナーの体調が悪く出発は遅めの時間に。
出発時から怪しい雲行き
終始猛烈な風と吹き飛ばされてくる雪とで、だんだん真っ白な世界に。
時々わずかに得られる視界を頼りに高度を上げていきます。
利尻はこんなもん、らしいです。
ほう。
とりあえず2人とも全身エビの尻尾ができていました。
モナカ雪ではあったけれど幸いそれほど深いラッセルはなく(一番深いところで太ももくらい)、順調なペースで稜線に出ました。
稜線ではさらなる強風。
命の危険をギリギリ感じないくらいの、強風。
全身で風を受けて!
風上に向かって身体を傾け、アイゼンをきかせながら一歩一歩進む!
たぁああぁぁぁああーーーーのしいっっっっ!!!!!!!
冬山はこうでなくっちゃ!!
こー、ごーえそーうな、きせーつーに、きーみは〜!
……すいません、危ないので写真は撮ってません。
で、山頂、視界なし。
お、晴れてきたぞ! ロウソク岩が……(心の眼)
40分ほど山頂にいて粘ったものの、晴れる兆しもないのですごすごと下山。
気を取り直してぽてぽて歩いていたら、晴れてきた。
空と、海と、純白の利尻と。
「白鳥はかなしからずや 空のあを海の青にも染まずただよふ」
山頂で視界が得られなかったのは少し残念でしたが、利尻はただただ凛として美しい山でした。
惚れ込む人、憧れる人が後を絶たないのも頷けます。
ここは、特別な山だ。
結局、急用ができて翌日の飛行機で帰らねばならなくなり、GWのバリエーションは取りやめに。
たった4日間の短い北海道でした。
フェリーから見えなくなるまでずっと、甲板から別れを惜しんでいた。
また絶対に来るよと夕陽に誓う。